神戸製鋼の品質トラブルにある根本原因とは?–コンプライアンス違反のメーカーの見分け方–

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品質問題に揺れる神戸製鋼の品質問題。この問題の根底にある理由は一体何なのか?そして、こういう企業を株を買う前に見分ける方法について考えてみたいと思う。

株価低下のリスク–コンプライアンス違反は企業の生命線–

事実上、日本に3つしかない高炉メーカーのうちの一つ神戸製鋼が品質問題で揺らいでいる。世界的な鉄鋼増産の流れに乗って一時1300円もあった株価は、この検査証明書のデータ改ざん問題で11月24日時点で1025円となっている。そして、影響はまだまだこれから続いていく。ISO取り消し、JIS取り消しの影響もさることながら、今後の最大のリスクはアメリカによる賠償請求なのではないだろうか?同様の問題があったタカタに多額の賠償請求があったことは記憶に新しい。そして日本ではリコール問題までにはなっていないが、アメリカでは果たしてどうなることやら。。なぜこのような問題が表面化しなかったことから、コンプラインス違反のメーカーの見分け方を考えていく。

データの改ざんは品質の監査でなぜ見破れないか?

企業の品質関連の業務に少しでも働いたことがある人間なら、大企業になればなるほど数多く品質監査を受けていることを知っていると思う。ISO9001の認証に始まり、JIS認証、船級認証、海外認証(海外強制規格)など、神戸製鋼なら確実にほぼ毎月受けているはずである。なのになぜ、このような問題が出てしまうのか?そして、こういう改ざん問題が出て後になぜISO取り消し、JIS取り消しという話になるのか?答えはいたってシンプルである。

そもそも品質の規格が”従業員に改ざんさせない”という点を目指していない

今の品質システムの規格には、”PDCAサイクルを回す”、”顧客のニーズに答え、顧客満足度をあげる”、”リスクアセスメントをする”などという要求はあるのだが、”従業員は改ざんさせない”という要求はない。そんなの当然のことだから書かないというのはごもっともである。当たり前だから、見抜けない。大体、他の場所から監査官がきて2日〜3日のスケジュール程度で品質監査を行っても、組織ぐるみで隠されたら、見抜くことは絶対に不可能である。だから、ISOの認証を持っている、JISの認証を持っているというのは、”品質を良くする地盤はある”ということは言えても、”コンプライアンスに強い企業である”とは言えないのである。もしISO9001の要求に”データの自動転送化をトップマネージメントが推進する”とあれば、このような問題は出なかったのかもしれない。

企業を選ぶ立場から見て、どうすれば株価低下のリスクを避けることができるか?

前述したように品質認証を持っているということは、コンプライアンスを遵守しているということには結びつかない。では、そのような企業を見破り、株を持たなくするにはどうしたら良いか?

1、企業が過去起こしてきたコンプライアンス違反を調べる。

今回のトラブルもそうであるが、こういうデータ改ざん問題は、何十年も続いている可能性が高い。そしてこういう意識が低い会社は過去にも同様のトラブルを出しているのある。神戸製鋼の過去のトラブル事例を列挙してみる。

 

2001年〜2008年 所得隠しの発覚

2003年〜2006年 大気汚染のデータ改ざん

2005年 橋梁の談合事件

2006年 公害の発生

2009年 選挙資金の肩代わり

2016年 ばね用鋼材の強度を改ざん

2017年 アルミ製品データ改ざん

 

2016年にも品質問題を出しており、こうなってしまう予兆はすでにあったのである。遅かれ早かれ今回のような大問題になる可能性は過去の歴史を見れば明らかである。どんなに投資家としては、株を買う前にはこのくらいの調査は必要であるだろう。

2、トップの発言から考える

企業のトップがこの品質問題について、どのような発言をしているかでそのトップがどれだけ品質に関して考えているかが分かる。今回の神戸製鋼のトラブルを受けて、普段から品質問題に関わっているトップは何らかの”怒り”を感じるはずである。”神戸製鋼のせいで日本のブランドイメージが下がった”と。しかし、品質問題を理解していないトップは”我が社は大丈夫であろうか?”と考え調査を開始するのである。普段からこの問題に取り組んでいる企業は、駆け込みで調査なんかしないはずである。テスト前の駆け込み勉強みたいなものである。このトップの発言を見て、普段から品質活動を真面目に取り組んでいる企業かどうか、判断することができる。

3、業績から考える

2で述べたトップの意識で見たようにまずは、コンプライアンス遵守の意識を持たないといけないのではあるが、意識を持っていたとしても経営資源を投入しなければ何の解決にもならない。今回の神戸製鋼の問題の根底にデータの手入力があるとメディアは書き立てているが、手作業なんてどこのメーカーも当たり前にやっている。試験・検査の全自動化なんてよっぽどお金を投入しないとできない芸当である。そんなことができているのは、やはり企業の業績に余裕があるメーカーである。そこで今回の神戸製鋼の業績を見てみると、、

(年度)  (最終益)

2013年 700億(黒字)

2014年 865億(黒字)

2015年 −216億(赤字)

2016年 −230億(赤字)

直近でいうと業績は中国の過剰生産が問題なのか、芳しくなかったようである。東芝のチャレンジもそうであるように業績が芳しくないとコンプライアンスに資源を投入するという余裕は生まれない。

 

4、そもそも歴史のある重厚長大なメーカーの株を持たない

歴史のある重厚長大な企業(鉄鋼、自動車、重機、機械)の株を持たないという選択肢もあると考えられる。この考え方に乗ったのが、海外の投資家である。日本のメーカーの株価は、儲けているのに割安なのは総じてコンプライアンス意識が低いからである。これからの時代は、”いいものを作っていれば売れる”のは間違いで、”コンプラインアンスを重視しつつ、お客様が欲しいものを作っていく”という方向にシフトしていかなければならない。重厚長大なメーカーは一歩間違えれば、品質異常もしくはお客様の命に関わる問題があるにもかかわらず、コンプライアンス軽視の日本の歴史ある企業は、そこを海外の投資家に見透かされている。そもそもそのような株は持たないというのが、最強の株価下落のリスクヘッジなのかもしれない。

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